vol.14ためいきのショーウィンドウ
パスクヮ(復活祭)の時期のお菓子屋さん(左)/老舗のお惣菜屋さん(右)
イタリアはどの町に行っても、通りに並ぶお店の ウィンドウディスプレイの美しさに魅せられる。 ブティックや宝石屋さんだけに限らず、香水屋、 仕立て屋、画材屋、果てはお菓子屋さんからお 惣菜屋さんまで、まるで芸術作品のように、 私たちの目を楽しませてくれる。 ショーウィンドウはお店にとって、大切な店の 顔で、売上げを左右する重要な広告塔でもある。 だけど、これらディスプレイのために専門業者 がいるわけではない。
おじいちゃんだろうが若い娘さんだろうが、 その店の店員が担当する。彼らはその店に ある商品を全部把握し、適切なアドバイスを 与えるプロフェッショナルなのだ。 ある初夏の晴れた日、目抜き通りの眼鏡屋さ んの前で私は足を止めた。店のおじさんが ちょうどサングラスをディスプレイする最中 だった。いくつも重ねられたクリーム色の箱 の上にワインレッドの布がかけられ、パンを いくつか並べてサングラスを飾っている。 時にパンとパンの隙間に、時にパンにもたせ かけて。 サングラスとパン!固定観念を超えたこんな 発想いったいどこから思いつくのだろう。
こぼれ落ちる瞬間のワイングラスに注目(左)/木でできた愛らしいピノッキオ(右)
セクシーで上品なラ・ペルラ(左)/ナターレの時期のお花屋(!)さん
秋の夕暮れ、同じウィンドウをのぞくと、 今度は栗を使っていた。 こんな風に、どのお店も趣向を凝らした ディスプレイでお客に商品をアピールし、 お店が閉まってる夜の間でもウインドウ には綺麗な照明がともされている。 イタリア人たちがそぞろ歩きが好きな理 由がやっと分かった。 家族や恋人たちで、どこに行くわけでも ないのに綺麗に着飾って、道行く人同士 を見たり見られたり、それからウィンド ウショッピングを楽しむ。 なぜならショーウィンドウのなかには、 ためいきがこぼれそうなドラマがあるから。
FINE
Copyright(c)2004 AKIKO TSUBOBAYASHI All Rights Reserved. ●許可無く複製転載する事は法律に触れます。