エルンスト・ライツ ズミルックス50mm f1.4

このレンズは15年ほど前、ライカM3を某氏から格安で譲ってもらった時に付いてきたものだ。「ボディだけではどうにもならんでしょ。標準レンズを付けとくから・・・」ということでボディとセットで譲られることになった。当方、譲渡価格がそこらの中古相場より相当安いこともあって、ズミクロン50mmあたりを付けてくれるのだと思っていたのだが、手渡されたM3を見てビックリ。なんとズミルックスが付いているではないか・・・・・。当方驚いて、そのことを言うと、「あんまり使うレンズじゃないし、正直な所ズミクロンの方が使いやすくてねェ〜。いいよ譲ってあげるよ」とのことだった。その方、ライカのMシリーズは全てそろえ、レンズも主要なものは全て所持しているという、ライカファン(コレクターではなく撮影にバンバン使っている)であったが、その気っ風のよさにはビックリしたものだ。

これまで、撮影、現像してみてこのレンズは違う、凄いと思ったレンズはそうない。日本製ではニッコールの85mmF1.4、50mmf1.4、105mmf2.5。ドイツ製ではプラナー85mmf1.4、コンタフレックス付属のテッサー45mmぐらいのものだ。
このズミルックス50mmf1.4は心底凄いと思った。他のレンズで撮ったフィルムと一緒に現像しても、どれがズミルックスで撮影したか分かるのである。階調再現の素晴らしさ、シャープな結像には、これぞライツのレンズだと言わしめるものがあった。
こういうしっかりしたネガを生み出してくれるレンズを使うと、プリント作業は楽で、楽しいものになる。モノクロでの撮影が主体の頃は、個人用の気合いを入れて撮らなければならない写真は全てこのズミルックスで撮影していたし、仕事でも開放から安心して使えるレンズであることから舞台撮影やポーズ撮影用に活用していた。
その後、仕事用の機材がふえ、モノクロ撮影からカラーフィルムでの撮影の頻度が高くなり、しかもデジカメで仕事の9割を済ませるようになってからは、このズミルックスの出番はどんどん減り、個人用の撮影にたまに使う程度になってしまった。

これまでズミルックスを使う場合、カメラに入れるフィルムはモノクロばかりだったが、今回、ひさしぶりにネガカラーを入れて撮ってみた。カラーについては一部ではライツのレンズは弱いと言われているが、ズミルックスについてはそんなことはない。階調再現のすばらしさに加え、コクのある色乗りで十分カラーにも対応できる。ライカM6に付け、久しぶりに使ってみると、とてもイイ感じだ。撮ってる。撮ったという実感がある。

久々のズミルックスによる撮影↓


ズミルックスのボケ味は好きだ。人によると今一つと言う人もいるが、絞り開放で使うと必要な部分だけピシッと決まって、その他の部分は滑らかにボケる。


夕方の撮影で絞りはほとんど開放域だが、ズミルックスのしっかりとした描写力は破たんしない。写った部分の質感を確実に再現してくれる。カラーでは分かりにくいがモノクロ撮影ではこの底力が大いに役立つ部分となる。

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