金ピカ偽ライカに味をしめ、そのオリジナルを検分すべく追加購入したのがこのKMZ(クラスノゴルスク機械工場)製のゾルキーである。購入の手配をお願いした北陸方面のM氏から「全体に綺麗で元箱、取り扱い説明書がついとります。調子もよさそうです」と届けられたものだ。
「ソビエト製のカメラは当たり外れが大きい博打」ソビエト製カメラを入手し、遊んでみようとする者がまず一番に頭にたたき込んでおかなければならない鉄則である。
シャッターが切れれば儲けもの、ピントが合って写ればラッキー、買ったカメラがまともに動けば万歳である。せっかく買ったのに動かない。ピントが合わないなどと文句を言ってはいけない。ソビエト製カメラはそれで当たり前の世界なのだ。
間違ってもソビエト製のカメラを自分の写真撮影のメインにしようなどということは考えないほうがいい。しっかり間違いなく写真を撮りたければわが日本製のコンパクトカメラを買うのが正解である。ソビエト製カメラは「ははは・・・・(泣)」と撮影後、笑える人でなければ、年中、購入先にクレームをつけなくてはならない羽目に陥る。

で、入手したゾルキーであるが「大当たり!」であった。
シャッターはほぼダイヤル表示通り切れ、距離計も問題なしで、ばっちりピントがくる。付いていたインダスター22・5センチf3.5も本家エルマー並みのシャープなレンズである。「おおっ!これまでスカばかり掴まされてきたが、今回はばっちしやんけ」10枚ほど試写した当方は大喜びであった。「なかなかやるやないかソビエトも!ソビエトカメラ関連の本ではぼろくそ書かれておるが、ちゃんと作ることもできるやないか」その時は心底そう思った。使えるソビエト製カメラがやっと手に入ったのである。
ところが・・・・・。
ソビエト製カメラをちょっとばかし甘く見ていたことに気付くのにそう時間はかからなかった。喜び勇んで街に持ち出し、パシャパシャと快調に撮影を続けていたところ、フィルムカウンターが12枚目の頃から異様に巻き上げが重くなってきたのである。「ありゃフィルムがきちんと入っていなかったか?」と思いつつ巻き上げるとガリッといやな音がした。
まあいいかと思いつつさらに撮影を続けたが、ついに巻き上げ出来なくなった。「こりゃいかんわ」。巻き戻そうとすると巻き戻しノブがこれまた異様に重い。指が痛くなるほどである。
フィルムを入れ換え再び撮影してもやはり12枚目頃から重くなる。
嫌な予感がして撮影を切り上げ、現像してみると「なんじゃこれは」であった。
1枚目からコマ数が進むにつれ徐々にコマ間が狭まり始め、12枚目頃からは多重露光状態(写真参照)である。パーフォレーションは欠けまくっている。きちんとフィルムが給送が出来てないのだ。いろいろ調べてみると巻き戻しノブの軸の加工精度が悪いか、あるいはなんらかのショックを受け、ゆがんでいる事が原因だと判明した。通常、フィルムが送られていると巻き戻しノブの中心軸も一緒に動くのだが、我がゾルキー、ノブを見ていると素直に動いている時と、全く動かない時がある。クリクリ回してみると妙なひっかかりがあるのだ。このひっかかりがフィルムの給送を妨げていたのである。
「どひゃあ」反返るしかなかったが、12枚目まではほとんど問題無く動いている。ということは12枚撮りフィルム専用にこのカメラはすればいいのだ。そうすれば完璧に動くソビエト製カメラになる。そうは思ったが、巻き上げのトラブルはともかくソビエト製にしてはここまできちんと動くカメラは貴重品であるし、12枚撮り専用というのも情けないということで、調整に出すことにした。恐らく購入価格以上に調整代がかかるはずだが、このゾルキー飾り物にはもったいないほど良くできているのであった。


お試し撮影
今回、驚いたのは入手したゾルキー付属の標準レンズ、インダスター22。このレンズ、ライツエルマーのコピーであることは有名だが、当たり外れが多く、その描写にしても本家に相当劣ると言われていた。これまで数本のインダスター22を当方は入手しているが、そのいずれもが妙にコントラストの低いボヤッとした描写をするものばかりだった。その描写を「どう撮ってもロシアの風景になる」などと言っていたのだが、今回のレンズは違った。本家が御辞儀するぐらい良く写るのだ。一瞬、ライツエルマーの刻印をインダスターに打ち変えたのかと思ったほどだ。逆光ではフレアが出るが(これは本家も同じ)順光下では全く問題ない。メリハリのあるしっかりした描写は「いやあ見直しました」である。
この性能をコンスタントに維持できれば、世界中で使えるニセエルマーとして売れるだろうになあと思った次第だ。ボディについてはコシナのフォクトレンダーシリーズもあるし、本家ライカのMシリーズでも問題なく使えるから無理に動くか動かないか心配しなければならないソビエト製を使う必要はない。


試写1

曇天下でここまでコントラストが落ちず、色が再現できるのは評価していい。経年劣化の激しいエルマーを入手するよりもインダスターの良品を探すのが得策だと言う人がいるのも頷ける。価格は本家の十分の一程度であり、コストパフォーマンスを考えればこちらが断然お買い得だ。



試写2

黄色カブリをするとよく言われるインダスターだが、当方入手のものはそうでもなかった。むしろ自然な感じに再現してくれる。妙な濁りがなくすっきりした感じだ。



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