vol.13南イタリアの蜜の味

      
真夜中、ボローニャから南に向かう寝台特急に乗った。
明け方になって窓の景色が、太陽の光に銀色に輝く海や、樹齢ン百年という迫力の極太のオリーブ畑に変わってた。
ながぐつ半島のかかとの部分、プーリアに到着。

怨念のつまった洞窟住居ーマテーラー

プーリアの州都バーリから内陸部に向かう電車に乗る。
一面のオリーブ畑の間を電車は走りぬけてるけど、トンネルを
越えた途端に景色が変わった。どうにもこうにもならないよう
な岩肌の広がる荒野。ながぐつ半島のつま先とかかとの間に
位置するバジリカータ州。洞窟住居の町マテーラに到着。
広場から見下ろした旧市街にゾクっとした。寂れた廃墟のような
建物がところ狭しと並んでいて、今にも崩れ落ちそう。
岩を切り崩して作った洞窟住居群には、戦後の農地解放前の
小作農民が住んでいたらしい。電気も水道もなく、貧しい、
現代の文明から取り残された人たちの住居だったという。
まぶしい南イタリアの太陽の下で、それらはまるで白昼夢を
楽しむかのように静かにたたずんでいた。

  

結局たどりついた異国情緒ただよう町ーブリンディジー

翌日の午前中はブリンディジという町で過ごした。ここはギリシャへの船の玄関口。
町はどことなく異国情緒が漂い、窓の柵や建物の装飾がどことなくギリシャっぽい。
昔、ギリシャを旅行した時、イタリア行きの船の乗り場で「イタリアまで渡っちゃ
おうかな」なんて突然、思いついた。
エーゲ海のはるか彼方にうっすらぼやけて見えた(ような気がした)大好きな
ながぐつの国のことを思うといてもたってもいられなかった(当時から大のイ
タリア好き)。
結局その時は時間がなくて実現できなかったんだけど、あの時、渡ってたら
この町にたどりついてたのね。やっぱり来ちゃったんだぁ・・・ちょっと感動。
胸に秘めてる想いはいつか実現するって、私、信じてます。

ブロンズの光に包まれた町ーレッチェー

レッチェはながぐつ半島のかかとの一番先の町(最南端)。
イタリアを北と南に走る国鉄もここでおしまいです。
ところで南イタリアの電車は油断ならない。駅の時刻表(意
外に電光掲示板が多かった)に同じ電車がふたつも表示され
てたり、そのくせその電車は実際なかったり、実在する電車
の時刻表示がなかったり。ふりまわされています・・(ま、
いいんだけど。イタリアだから)。
バロック装飾の建物があちこちに点在するブロンズ色の町で
お昼を食べた。今日はキリリと冷えた白のスパークリングワ
インで。前菜は生ハム&モッツァレラ・ブラータ(とろとろ
のモッツァレラにもうやみつき!)。プリモは伊勢海老のパ
スタ。ダシがよくきいてて美味しかった。これで8ユーロ
(ボローニャだと少なくとも15ユーロはとられるよ)。
セコンドは海の幸のフリット。揚げたてのイカ、タコ、海老
のフライにレモンをジュとしぼって食べる。ん〜♪
 ドルチェはタルトゥフォ・ネーロ(黒トリュフ)と名づけ
られたチョコレートのアイスケーキ。タルトゥフォ・ビアン
コ(白トリュフ)はホワイトチョコのアイスケーキなのだけ
ど、私は断然、ネーロが好き。


同じターラントでも新市街のほうはそんなヤバそうじゃないです。
怨歌が似合いそうな港町ーターラントー

ながぐつ半島のかかとの裏側ターラントは
イタリア海軍のある港町。イタリア女性の間でも
「海軍には気をつけろ」と言われるほど、とにか
く女たらしらしい(流れ者だからね)。
旧市街に一歩足を踏み入れて、ア然!とした。
寂れた建物、窓、壁・・今にもくずれそうな幽霊
屋敷がひしめきあっていた。
男に捨てられて泣いてる女がいっぱいいそうな、
怨歌が似合いそうな、ホント、心がすさみそうな
港町だ。廃墟同然の旧市街なのに人の息づかいが
聞こえる(実際、住んでいる)。
通行人や車やバイクの音。この町は華やかなイタ
リアの裏の顔ってカンジ。
「異国の女がこんな町に何の用だ」という目で
男たちが私をジロジロ見る。さすがは視線と視線
がねっとりからまるラテンの国!怖いもの見たさ
というか、とにかく目が離せない!
私、この町嫌いじゃない(住むのはイヤだけど)。
私も寂れた港町育ちなので、そういう視線には慣
れてるしここの空気なんとなくノスタルジーアです。


綺麗で不思議な異空間ーバーリ旧市街ー

夜が降りてきて、ライトアップされた広場のカフェに
座ってカンパリを飲んだ。北イタリアは冬だというのに
ここは暖かく、海からの風が気持ちいい。
通りは夜を楽しむ人たちでにぎわっている(こういうと
こがイタリアの真の豊かさだと思う)。
勘と鼻をたよりに洒落た門構えのピッツェリーアに入っ
た(「ここは絶対うまいぞ」とお腹の虫がさわいだの)。
サービス のパンとトマトのファカッチャを肴に生ビー
ルを飲む。前菜はバーリ風サラダ(レタス、ポテト、ト
マト、赤タマネギをアチェットバルサミコで)とプーリ
ア地方のチーズの盛り合わせ。モッツァレラ・ブラータ
、モッツァレラ・ブッファラ、リコッタ・・あぁもう止
まらない。ピッツァ・カプリチョーザ、ここのは緑のオ
リーブとマッシュルームとアンティチョークがのってた
。生地もソースもトマトもチーズもイケてる。お腹は十
二分目だというのにドルチェまでたのむ。マチェドニア
(フルーツポンチ)は私がとても気に入った店で食べる
ドルチェのひとつ(フルーツの種類とシロップの味が気
になるから)。やっぱり私の勘は当たってました。
いいぞ〜、バーリ。いいぞ〜、プーリア。
どこまでものんびりとイタリア時間が密度を増すそこで
は、日常までも彼方へと遠ざかっていきそう。
「南イタリアは危ない」北イタリア人は口を揃えて言う
けど、「危ない」とは人生をも変えてしまいかねない危
うさのこと?やっぱり南イタリアはやめられない。

  


道ばたでポレンタを揚げてたおばちゃん

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