vol.6イタリア式ウェディング

夕刻の鐘が鳴り響くなか、カラーの花束を抱えて私は
黒いれん鉄の門の前に立っていた。門の内側の誰かが
私に気付くと、数秒後、大きな門が自動で開いた。
中庭ではすでにもうパーティが始まっている。たかこ
さんとダビデが笑顔で迎えてくれた。ふたりは昨日、
ボローニャ市庁舎のなかにあるサラ・ビアンカで婚姻
の契約を交わしたばかりだ。「来てくれてありがとう」
といいながら花嫁がついでくれた薔薇色のカクテルを
手に、私は席についた。「あそこのビュッフェで何で
も好きなもの取って来ていいのよ」と隣のイタリア女
が教えてくれた。綺麗なビーズ刺繍が施された麻のパ
ンツスーツを堂々と着こなしている。

  

ビュッフェには、パスタやパテに混じって巻寿司や
豆腐のサラダまで並んでいる。「彼の家族や親戚に
日本文化を知ってもらいたいから」って作った花嫁
の自身作だ。みんなよく笑って、よく食べた。花の
ようなドレスを着て、花のような笑顔でそれぞれの
席を行ったり来たりしている花嫁がすごく印象的だ
った。夜が暮れかかった頃、お庭の真ん中に大きな
ケーキが登場した。「AUGURI(おめでとう)!」
とチョコレート文字で書かれたそれは、二人のお気
に入りのパスティッチェリア(お菓子屋さん)で特
別に注文したそう。

シャンパンが開くと同時に「バーチョ!バーチョ!」
という言葉が飛び交う。バーチョとはイタリア語で
「キス」という意味だ。

夜が暮れかかった頃、ポツリポツリと雨が降りだし
た。誰もが大慌てでお料理や飲み物を家のなかに運
び込む。ワインがまわって赤ら顔の紳士たちも、花
嫁も花婿も。室内でもパーティは夜中まで続く様子。
TANTE AUGURI!!

  

 

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