製作記 その1

連日、報道されているアフガン情勢の中で、テレビで放映、あるいは新聞、週刊誌に掲載される写真を見ていると、そこに登場する軍用車輛に目が釘つけになる。現地の人々の事を思うと少々不謹慎だとは思いつつも、どうしてもAFVマニアの目で見てしまうことは確かである。
私の所属するTMCの来年のテーマは「女性にもわかりやすい模型」である。様々考える中でアフガンの軍用車輛ならジオラマ化すればそのメディアへの露出度から一発で分かるのではないかと考えた。選んだアイテムはカブール解放の場面で登場したT55である。

T55のキット
T55は昔はタミヤのゴムキャタモーターライズ「コマンダー」しかなかった。超有名戦車でありながらキットに恵まれていない戦車であった。いずれタミヤが改定・製品化すると期待していたのであるが未だ実現せず、そうこうするうちにリンドバーグ、エッシーと35でキット化され、最近になって中国のトランぺッタ−から一気にT54/55系列が発売された。まだ日本には入っていないようだが最新作としてはスキフからリリースがアナウンスされている。
リンドバーグのT55は新設計ということで発売前の期待は大きかったが、発売されてみれば問題が多いキットで現在のレベルからみると少々つらいものがある。どうにか使えるエッシーにしても何となくプロポーションがしっくりこない点が弱い感じがする。以前、エッシーのキットを基に手を入れ作ったことがあるが、キットの価格以上に資金を投入し、苦労した割には満足する形にはならなかった・・・・。

今回はトランぺッタ−のキットを使用
今回アフガンのT55を作るにあたり使用したのは最近入手したトランぺッタ−のキットである。過去の同社の製品から見たり、現行品でも箱絵だけをみると信用できない気がするのだが、以外と中身はしっかりしている。価格も今や入手難になったリンドバーグやエッシーよりも遥かに安い。(フィンランド軍仕様のT55を購入すればマインローラーがついているのにノーマルと同価格とお得だ)プロ−ポーションはリンドバーグやエッシーに比べると格段にT55らしさが良く出ている。砲塔の溶接跡や鋳造表現なども甘いけれども再現されている。
難点は小パーツのモールドの一部に甘い部分があること。一つの基本形でT54/55の各タイプ、果てはライセンス生産車までに対応させたため、部品構成が煩雑になったり、やたらと穴開け作業が多くなってしまった部分が増えてしまっていることだ。また初期発売分と後からバリエーション開発追加された部品ではその精度が違うのも少々やっかいといえばやっかいな部分である。しかし基本形がしっかりしていればどうにかなる。細かな部分はエッチングを使用したり、あるいは自作すると十分対応できる。今回の製作にはエッチングパーツが品切れで入手出来なかったため使用しなかったが、要所につかえば作業は楽でまた見栄えはぐっとよくなると思う。

アフガンのT55
当方が参考に用意したのはカブール解放時の新聞、週刊誌などである。
映像で見るT55はどのタイプであるのか判然としないほど使い込まれて?ボロボロ状態である。新旧のT54/55が入り乱れているような気がするのだが、一応、作るのはキャタピラがT72と同じものとなっている改修型T55とした。カブール解放時の写真で北部同盟の兵士がぎっしり乗り込んだアレである。数枚の写真を見ているとフェンダー上の燃料タンクが正規の位置になかったり(左右が逆)、ヘッドライトが増設されたり、古いタイプの履帯を使用したりと個体ごとに相違が見られるが共通しているのはいずれもオンボロ状態ということだ。塗装はベースは旧ソビエト軍のままで、車体ナンバーも恐らく旧ソビエト軍のままである。その上から行われた迷彩はその効果を疑う青やら赤のペイントを斑点状に塗ったり、サンドイエローを適当に吹き付けたりしている。ここら辺のアバウトさがアフガンのT55の魅力でもある。
しかし、よくもまあ、あのオンボロT55が動くと思うが、あの辺では機械モノが壊れるとスクラップを掻き集めてでも再生修理してしまう。インドやネパールを旅するととんでもない整備状態のトラックやらバスなどにお目にかかるが、アフガンのT55も同様であろう。なにしろ動けばいいのだ。見栄えは二の次である。
ということで模型でもこのアバウトな使用状況を再現することに重点を置くことにし、いかにもオンボロに見えるように工作することにした。

組み立て
トランぺッタ−T55で一番やっかいな部分がキットの材質がABSという点である。この問題に関しては様々なサイトやBBSで話題になっているが、なにしろ通常のスチロール系接着剤ではどうにもならない。当方はセメダイン社のABS用接着剤とゼリー状瞬間接着剤で対応した。スチロール系接着剤の時よりも多めに付けることで十分な接着強度は得ることが出来た。
組み立ては接着以外は通常のキットと同じように進めることができる。削り合わせをしたり、バリを取ったり、妙なところにある押し出しピン跡の処理に手間がかかるが、この程度の手間ならレジンキットや簡易インジェクションキットを組むことを考えればはるかに楽なレベルだ。型抜きの都合からか、省略された部分も目立つが、その辺は資料を見ながらディティールを追加していく。使用した資料は戦車マガジン別冊の「T54/55、62」で、おおよその部分はこれ1册で間に合う。あとは新聞の写真などを参考にした。

NEXT→